SURRENDER

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SURRENDER

嵌って抜け出せないか。
安寧も幸福も望まないのか。
そうじゃないだろ。
お前らは、


「…なんだいソリャ、」


学校なんて言葉忘れたようにバックレ決めてタムラに来たペコの首を見てオババが言う。

「んー、よそもんのジャリに絡まれたんよ。ふっかけられたんで買ったら、ちいとな。」

そうしれっと答えるペコは不二家のポップキャンディの包装をガサガサと音を立てながら開け、口に咥える。


「締められたのかい、穏やかじゃないねぇ。」

「んでも、たっぷり愛しといてやったかんね。」


ノープロっすよお、と笑みを浮かべるペコにオババはほとほと呆れたという顔を見せ、

「てめえもクソジャリに変わりねえんだ、卓球やってくんならはしゃぎすぎんなよ。あいつみたいに停学になんぞ。」


乱雑に置かれたパイプ椅子に座ってスポーツ雑誌をめくる青年をタバコで指す。


「おーおー、元ハゲメガネくん。」
「よお、ボンタンバカ。」

粗雑な応酬はいつものあいさつで、髪型も自由になったアクマは、ペコとはまた別の青春を謳歌し始めている。謳歌しすぎて停学になることもしばしばで、タムラにも顔を出すようになっていた。


「…ちいとツラかせ、オモテ出ろ。」
「オヨヨ、なんすかダンナァ」

こわいワァ、なんて形だけ怯えたフリをしたペコにアクマは黙って来いと言うと、申し訳程度に着てきたペコの制服のシャツ襟を掴んで引きずって行く。

「おめぇら、親御さんに心配かけんじゃないよ」


そのオババの言葉にアクマは後ろを向いたまま手を上げて片手間に返事をし、ペコは助けてくれろオババー、アクマに喰われるーなんてふざけた調子で喚きながらタムラを後にした。






「おめえなんでウルトラ自宅警備隊してんの?」


時期にはまだ早いカキ氷をシャクシャクと食べ、口のまわりが赤くなったペコはアクマに聞く。


「バイトのドカタのオヤジが給料ピンハネしやがったから殴ったらチクられてよ。」

「あらら、ゴシューショー様だぁ、もっと上手くやりなさいね。」

うるせえよ、とアクマは駄菓子屋横に乱雑に置かれたビールケースに腰掛け、上手くやるつもりは端からないのか慣れた手つきでハイライトに火をつける。


「…それスマイルか?」

問うアクマが指したのは自分の横のビールケースに腰掛けたペコの首。


「んー?ちげえよ。」

「…そんな真面目にばっくれんな。よりそれっぽいじゃねぇかよ。ジャリにやられたんなら他んとこにもアザあるはずだろうが。」

「んまー、よっく見てんねー。」


だいすきじゃんすかーオイラんこと〜、ペコは言いながら手を伸ばし、アクマの頬を人差し指でつつけばぴしりとはたかれ、つれないのねアナタ…なんてふざけた口調で言う。


「なんだ、DVってやつでも受けてんのか?…笑うようにはなったがよ、俺ァときどきあいつがこえーよ。」


アクマがそう言うとペコは食べる手を止めストローを口に加えたまま下を向いて微笑む。


「…黙んな、クソが。SMでもやってんのかよ。」

アクマは吐き捨てるように言う。


「…あながち外れちゃいねえな。イクとき締めっとね、すげーきもちーんすよ。」


「…っ!クソホモに加えてクソエムかよ、救えねえな。」

「凡人には見えねー景色っつーのもあんのよ。」

「正直その点については凡人を神に感謝すんよ。」

ほんとそれな、と自嘲するように笑うペコをアクマは見たことがなかった。


「…どうしょーもねえくらいらぶらぶなのね、俺ら。」


「スマイルがな、欲しがるんさ、俺んこと。そんでもって俺もあげてえなって思うんよ。スマイルの手で死んだらオイラをあいつにやれる。スマイルもオイラにおんなじこと思ってんのよ。しゃあないべ。」


笑みを浮かべたまま諦めたように言うペコに背筋が粟立つ。


「‥頭おかしいんじゃねえのか?」


「へっへっ、すげぇ大事ですげぇ守りてぇって思ってんのにそれと同じくらいそう思うんよ。」


「…死なば永遠ってか、安いな。」


そういってくれるな、アクマ。愛してんのよ、これでも。ペコは立ち上がって伸びをする。ヒーローであるはずの彼の背中が小さく見えた気がした。

「‥そんなわきゃねぇのはわかってんだ。
たぶんあいつはオイラが何しても受け入れるんだ。いっそのこと離れりゃいいんだけどそれもできねぇの。」

そんな顔をするなよお前。
違うだろ俺の知ってるお前らは強くて壊れないような。
乗り越えて強く思い思われた関係は、
均衡を保った円のようで壊れないんだろうとアクマは思っていた。

強すぎる思いは引力を持って、引き合ってぶつかりあう。悲鳴を上げる。


「びびってんのよ俺らは。」


空中に視線をやって自嘲ぎみなその姿は痛々しい。


「お互いのいない世界に一秒でもいるのが怖ぇのな。」

怖ぇなんて言うやつだっただろうか。タバコを深く吸って吐き出して、


「だったら一緒に死ぬってか?」

アクマはそう続けてやる。

「クソすぎて救えねぇ。説教する気にもなんねえから、もう仲良くおてて繋いで死んじまえよ。誰も泣かねえからよ、んなクソみてえな考えのお前らのことでよ。」

したら俺が海に流してやっから。

そう言うアクマにペコは少し驚いた顔をして、


「良いおともだちを持ってんよ、ほんと。」

目を細めながら笑う。

「‥今さらだな。」

「スマイルもスイソウ?が良いって言ってた。魚に喰われて食物レンサの中に入るんだってよ。」


「ほんと電波だな、お前ら。 そのスマイルは今日はどこだよ。」

「なに言っちゃってんのアクマ。自宅警備のしすぎか?今日はヘージツでしょうよ。」

「てめーが言うんじゃねえよ。」


今度会うとき気が向いてたら説教たれてやっから覚悟しとけって伝えとけ、そう言ったアクマはフィルターギリギリまで短くなった煙草を大きく吸ったあと指で弾き、弧を描いて飛んでいくそれをペコは目でおってみる。そしてアクマは立ち上がりポケットに手を突っ込み歩き出す。


「ペコ。」

呼ばれて頭を上げたペコの視界にアクマの背中が入る。

「‥死にてぇも生きてぇもおんなじだろ。」

ペコは面喰らったように少しだけ目を開いた後、笑みを浮かべて、


「頼りにしてんよ、アクマちゃん。」


甘えんな、クソッタレ 。

いつかの

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国際電話

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Inside Outside

「恋人絞め殺すってどういうリョーケンだよなあ〜。」

下校途中の駄菓子屋で能天気に物騒なことを口にする。その右手には冷えた瓶のスプライト。めっきり見なくなった瓶のタイプを置いている数少ないこの店を星野は気に入っていた。
いくつかの菓子と共に会計を済ませ、栓抜きを使って蓋を開ければ、ぷしっという音と柑橘の匂いが漂う。

「しかもその後カレシのちんこ切り落として逃げてんのよ??」

ひひははんへえよ、と瓶を口に咥え、空いた両手でベビースターラーメンの封を開ける。…器用だな、と月本は思った。


「恋慕ってやつなんじゃないの?」

思ったことをそのまま言う配慮の足りない星野の言動に、月本は顔色一つ変えずに答える。

潮風をさわやかに身に受けながら海沿いを歩くにはふさわしくないその話題は、今日の阿部定事件を扱った授業のことだろう。恋人を扼殺し局部を切り取り、その動機は愛であったとのたまう猟奇的な事件は現代でもセンセーショナルで、思春期にとっては刺激的なその話題に興味をひかれたのか、星野は珍しく授業を聞いていた。

「…レンボってこたあ…、愛?」

「たぶんね。」

わっかんねえなあ、ベビースターラーメンを片手で口に流しこみ、バリバリと音を立て噛み砕きながら星野は言う。

「相手いなくなったら楽しくねえべ?卓球もセックスもよ。そう思わねえ?」

同意を求められ月本は珍しく返答に時間がかかる。質問内容もその要因だが、月本にはその事件当事者の心情に通じるものがあるのだ。

強烈に他人に惹かれ、溢れかえったその感情が一人歩きするような。

「…状況によるんじゃないかな。」

からがらそう答えた。とぐろを巻いたその感情がそう答えさせた。

「んー、スマイルだってよ、オイラがいなきゃ楽しくねえだろ?」

「うん。」


ーでもね、ペコ、


もうだいぶ昔から、薄気味悪い執着と感情が腹に住んでいて、それがぬたりと鎌首をもたげる。

「僕はペコになら殺されてもいいよ。」


その言葉を受けて星野は大きな目を見開き、

「…なんだそれ、」

もっともらしい答えだと月本は思った。

「冗談だよ。」


月本はごまかしたつもりだろうが、温度のない返答に星野は言葉をつまらせる。言うべきでないということはわかっていた。受け入れられるような感情ではないのだ。


「それぐらいってことだよ。」

多くを持たない自分にはペコは眩しすぎる、ふさわしくない、そう思うと同時に、凄まじい引力に魅了され、独占欲と執着が鳴き声をあげる。

「…それは愛か?」

眉間にシワをよせ、腕を組みながら星野がそう聞く。

「…愛だと思うけどね、どうだろう。」


「わっかんねーなあ、お前殺しちゃったらお前と卓球できねえじゃん!」

「うん。」

日が落ちて影が伸びている。何度も通ったタムラまでの道のり。看板が見えると星野は競争な!と走り出し、月本は出遅れる。何度繰り返したろうか。そうして勝負に勝った星野はオイラの勝ち!と言って月本に菓子を強請るはずだった。


「なぁ、スマイル、オイラで死ぬくらいなら、オイラのために生きろよ。」

息を切らしながら星野は言う。

「愛してんでしょ?オイラんこと。」


ニヤリと不敵な笑みを浮かべたその顔がたまらなく好きだと思った。

無敵だよ!

無敵だよ!

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おたおめ〜。°(°´ω` °)°。

おたおめ〜。°(°´ω` °)°。

やっぱカルビーにかぎんね!!
太るよ、ペコ。

やっぱカルビーにかぎんね!!

太るよ、ペコ。

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僕らはみんな

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